親から借金するときは、利息を支払う必要があることを知っていますか?
利息を払わない場合は、贈与税が必要です。課税制度を理解していないと、
親に借金するときに不要な贈与税がかかることもあります。
用途によっては贈与とならない場合もあるため、親に借金するときは
基本的な贈与税の知識が必要です。
また親の借金は、必ずしも子に返済責任があるとは限りません。
子が肩代わりする義務がある場合でも、親の借金を背負わずに済む解決策があります。
ここでは、親に借金する前に知っておきたい贈与税の基礎知識と、
親に借金が発覚したときの対処方法について解説します。
目次
親に借金するときも利息が必要?
子が親に借金をするときは、親子だから利息は必要ないと勘違いしている人も
いるかもしれません。しかしそれは間違いで、親子であってもお金の貸し借りには
利息が発生します。
金利に決まりはありませんが、銀行の金利を参考に設定するのが一般的です。
金利を1~2%程度として利息を計算します。
無利子で親に借金をすると、利息として支払うはずだった金額は「親から贈与された」とみなされます。つまり、借りただけなのに贈与税がかかってしまうのです。
ただし、利息の金額が年間110万円を超えないときは贈与税はかかりません。
「親子だから利息はいらない」と親に言われた場合は、利息額が110万円を超えないときは利息なしで借金しても贈与税は不要です。
親からの借金は返済しなくてもよいのか?
親に借金をしたときは、親の了承があれば返済しなくても問題ありません。
お金を借りた側と貸した側が納得していれば、返済義務はなくなります。
しかし借金を返済しない場合は、借金ではなく贈与になるので注意が必要です。
親から子へ資産の贈与があったとみなされて、贈与税が発生します。
もちろん親が返済を求めているときは、親子でも返済の義務が生じます。
双方が合意していれば、親からの借金を返済する必要はないですが、その場合は贈与税がかかると覚えておきましょう。
親に借金をするときの注意点
親に借金するときは、贈与と疑われないための注意が必要です。
借金なのに、贈与税がかかる原因になります。
ここでは、親に借金をするときに贈与税がかからないようにするために、
前もって準備しておきたいことと、注意したい点を解説します。
契約書を作成する
贈与ではなく借金であるなら、親に借金する場合でも契約書を作成しましょう。
贈与を疑われたときの証拠になります。
借金をするときは「金銭消費貸借契約書」を作成します。
一般的に「借用書」と呼ばれ、お金の貸し借りやローンを組むときの契約書です。
似た契約書に「債務承認弁済契約書」があります。
こちらは過去のお金の貸し借りに対して返済を定める契約書です。
基本的には、借用書をひな形に沿って作成すれば問題ありません。
借用書を作成するときは、下記の項目の記載が必要です。
- 借用書の作成年月日(お金を借りた日)
- 貸主の名前(直筆で捺印も必要)
- 借主の名前(直筆で捺印も必要)
- 借り入れ金額(金額は漢数字を使用)
- 返済期限と返済方法
- 金利と遅延損害金
親に借金をするのに大げさだと思うかもしれませんが、借金の事実を書面で残さないと
贈与とみなされる可能性があります。「贈与ではなく借金である」という証明の
ためにも、契約書は必要です。
返済期限・返済方法を明確にする
親に借金したときに契約書を作成していれば、そこに返済期限を入れておきましょう。
契約書を作成していない場合は、返済期限と返済方法を明確にする必要があります。
返済期限が決まっておらず、月によって返済したりしなかったりする場合は、
贈与と疑われることもあります。毎月決まった金額を返済していくことが重要です。
借金の金額に注意する
借金の金額が高額な場合も、贈与と疑われる原因です。
契約書がなく、返済能力を超えた借金を親からするときは注意しましょう。
親からの借金が高額になるときは、契約書を作っておくことをおすすめします。
無利子にするときは年間の利息額に注意する
親に無利子で借金するときは、本当は支払うべきだった利息額に注意しましょう。
支払うべき利息が年間110万円を超えるときは、超えた金額に贈与税がかかります。
特に借金の金額が大きくなる場合は、実際に利息を計算してみてください。
金額によっては、利息を親に支払ったほうがお得と感じるかもしれません。
親からの借金を返済しないときに贈与税がかからないパターン
親に借金を返済しなくてもよいと言われた場合でも、贈与税がかからないことも
あります。主に下記の4パターンです。
- 生活費や教育費にあてるとき
- 暦年課税制度の範囲内の金額のとき
- 相続時精算課税制度を利用したとき
- 住宅取得資金の特例を利用したとき
暦年課税制度や相続時精算課税制度、住宅取得資金を利用するときは申告や申請が
必要です。それぞれの詳細を説明します。
生活費や教育費としてお金を借りる場合
親に借金する目的が、生活費や教育費のときは返済しない場合でも贈与には
あたりません。生活に必要な資金を援助したとみなされるからです。
生活費や教育費という名目で借金したり、援助をしてもらったりしたときでも、
そのお金を別の目的に使用した場合はこの限りではありません。
贈与とみなされることがあるので注意しましょう。
暦年課税制度の範囲に収まる金額の場合
暦年課税制度とは、相続税の節税対策として作られた制度です。
生前に財産を子へ贈与するときに適用されます。
年間110万円までの贈与が非課税となり、基礎控除として扱われます。
110万円を超える贈与の場合は、超えた金額に税金がかかる仕組みです。
暦年課税制度には夫婦間や兄弟間で適用される一般税率と、親や祖父母からの贈与に
適用される特例税率があります。下記に示すのは、親から贈与された場合の特例税率
です。
贈与額ー110万円の課税価格 | 贈与税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ー |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,000万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円以下 | 55% | 640万円 |
暦年課税制度を利用したときの贈与税の計算式は以下のとおりです。
贈与税=贈与額ー110万円×特例税率ー控除額
特例税率は、その年の1月1日の時点で子が20歳以上のときに適用されます。
20歳未満のときは一般税率ですので注意しましょう。詳しくは国税庁のホームページを
確認ください。
相続時精算課税制度の申請をした場合
相続時精算課税制度とは、親が子に生前贈与をするときに2,500万円までを非課税の
対象とする制度です。
ただし、生前贈与の時点で非課税となった金額は、親の死後に相続税に加算されて
課税されます。つまり、税金が後払いになるだけという点に注意が必要です。
贈与されたときに税金を支払う必要がないため、贈与を受けるときに支払う余裕がない
場合に有効な制度です。
住宅取得資金贈与の特例を利用した場合
住宅の購入のために親から支援を受けるときは、住宅取得資金贈与の特例を
利用可能です。住宅の新築や増改築、購入などをするときに、最大で1,500万円までが
非課税となります。
消費税が10%の住宅については、下記の非課税が適用されます。
こちらも、詳細は国税庁のホームページを参考ください。
契約の終結日 | 一般住宅の非課税枠 | エコ住宅の非課税枠 |
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1,000万円 | 1,500万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 700万円 | 1,200万円 |
親に借金する場合のまとめ
親に借金するときは、下記のポイントに注意しましょう。
- 基本的には、親に借金するときも利息が必要
- 無利子のときは年間利息額が110万円を超えると贈与税がかかる
- 返済しないときは贈与税がかかる
しかし、贈与税の非課税制度を利用すれば優遇措置を受けられます。
制度をうまく利用しましょう。
子は親の借金を肩代わりする必要がある?
ここからは、親に借金が発覚したときの対処方法を中心に解説します。
親に借金がある場合には、子が肩代わりする必要があるかは契約条件によります。
基本的に子が保証人になっていないときは、親の借金を肩代わりする必要はありません。
親に借金があるときに肩代わりしなければいけないパターン
よくドラマで見るような「親の借金を肩代わりする」必要があるのは、
主に2つのパターンです。
- 返済前に親が亡くなったとき
- 子が保証人になっているとき
それぞれ、どういう状況のときに親の借金を肩代わりする必要があるのかを
詳しく説明します。
返済前に親が亡くなった場合
親が亡くなると、子にも財産分与がおこなわれます。
預金や不動産などの資産だけでなく、借金も財産分与に含まれることに注意が必要です。
民法の第896条には、「相続の一般的効力」として「財産に当たるものすべての権利義務を継承する」と記されています。借金も財産の一部と認識されることが、親の借金を
肩代わりする理由です。
親に返済をしていない借金がある場合は、子が債務者になります。親のうち、どちらかが存命しているときは子は2分の1の借金を相続し、兄弟と分割して借金を負います。
子が保証人になっている場合
親の借金の保証人になっている場合は、子に借金を肩代わりする義務が発生します。
親が借金の支払いができずに債務整理をおこなったときは、子が請求を受けることに
なります。
ただし、親が勝手に子の名前を契約書に書いた場合は無効です。
子の同意がない限り、保証人責任を負う必要はありません。
保証人には2種類ある点にも注意が必要です。
連帯保証人と保証人は、保証の範囲と請求において明確な違いがあります。
親の連帯保証人になっていると、貸金業者などの債権者から請求が来たときに
催告や検索の抗弁権がありません。催告の抗弁権とは「まずは親へ請求して欲しい」と
いう権利、検索の抗弁権は「親はお金を持っているはずなので私は支払いません」という権利です。
一方、保証人はこれらの主張ができます。
そのため、保証人よりも連帯保証人のほうが責任が重いと認識しましょう。
親に借金があることが発覚したときの対処方法
親に借金があると発覚したら、その金額や返済状況によっては早めの対処が必要です。
親が大丈夫と言っても、返済できずに亡くなれば子がその責任を負うことになります。
ここでは、親に借金があるとわかったときの対処方法について解説します。
生前に債務整理をしてもらう
支払いが困難な場合は、債務整理をすすめましょう。
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産があります。
借金の支払いが遅れているなど、支払うことはできるが毎月の支払いを減らしたいときには任意整理をおこないます。弁護士が貸金業者などの債務者と交渉して、利息分の減額や毎月の返済額の見直しを図ることが目的です。元金を減額することはできませんが、
法的制限を受けにくく利用しやすい救済制度といえます。
借金を5分の1程度に減額できる個人再生は、減額すれば支払い能力がある場合に
適用される救済制度です。一定期間はクレジットカードを作ることや、新たな借り入れが
できません。自己破産では認められにくいギャンブルが原因の借金でも、認められる
ことがあります。
借金が全額免除となる自己破産は、返済能力がないと判断されたときに利用できる
救済制度です。返済が免除される代わりに、全財産を手放す必要があります。
個人再生では残せた住宅についても、自己破産では差し押さえられるので
注意しましょう。
債務整理をしてもらうときは、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
親が亡くなっている場合は遺産放棄する
親が亡くなってから発覚した借金は、遺産放棄をすることで責任を
免れることが可能です。
通常、財産の一部として親の借金は子に責任が移ります。
しかし、親の財産を放棄することで、借金も放棄できるのです。
住宅や預金などの財産分与も放棄することになります。
ただし、親の財産で借金の総額を相殺できる場合もあるので、一度専門家に
相談するとよいでしょう。
親に借金があることが発覚した場合のまとめ
親に借金があることが発覚したときは、どこにいくら借金があるのかを確認しましょう。余裕があるのなら返済を助けるのが最善ですが、返済に困るようなら債務整理も視野に
入れます。
保証人や連帯保証人になっていなければ、子が親の借金を肩代わりする責任は
ありません。しかし、親が亡くなった場合は財産とともに借金も財産分与されます。
借金を肩代わりできないときは、遺産放棄することも可能です。
親に借金が発覚し対応に困ったら、まずは弁護士に相談ください。